「自閉性障がいのある子どもの療育と家族支援~本人の立場に立った理解と支援の視点~」 |
もくじ
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はじめに 自閉性障がいについては、障がいの早期発見、早期療育の必要性が謳われ、幼児期の保育や療育が充実してきたように見える反面、親からは「わが子とどのように関わればよいか」「専門的な治療や指導・訓練が必要か」など、子育ての不安や困難を訴える声はむしろ増えている気がします。また、学齢児や学校教育を終えた青年や成人の中には、激しい自傷、人への攻撃行動、強いこだわり、情緒不安など激しい行動障がいに陥り、地域生活が困難になっている人たちが数多くいます。親のなかには、将来への不安が増大し、「一緒に暮らしていけない」「入所施設に預けざるをえない」と思いつめる人も出てきます。 小さいころから、専門家を含め多くの人が関っているにもかかわらず、なぜこのような厳しい事態に陥るのでしょうか? 問われるべきは、各時期における支援のあり方、ライフサイクルを通しての支援の一貫性です。はたして、関係者は、意思や気持ちをうまく表せない子どもに対して、本人が納得のいく生活ができるような援助を一貫して行ってきたでしょうか。また、難しい状況に置かれる家族に対して十分な理解と支援をしてきたでしょうか。 本人と家族の人生に直接関与する者として、関係者の責任は重大です。私たちは、これらの問いを真摯に受け止め、支援者としての資質や専門性を見直す必要があると思います。 |
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1.私たちのめざす支援の基本的視点
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2.親と家族の抱える悩み、困難に対する援助
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3.支援者に求められるもの~その役割と責任
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4.基本的人間関係の形成と親の成長 自閉性障がいをもつ子どもが親や支援者をしっかり求めるようになるまでには時間がかかります。しかし、基本的人間関係が形成されてくると、結果として本人の行動に確実に積極的な変化が見られます。例えば、安心できる人が一緒にいると、その人との関わりを通して日常生活において周りのことを自発的に学んでいきます。言葉を含めたコミュニケーションの仕方、物の扱い方、周りの物の関係や意味も、こうした関係の中で理解が深まるのです。自律心、自制心もその人との関係の中で少しずつ育っていきます。 母親は、最初、「親の困ることばかりする」「人に迷惑をかけないようにしなければ」「将来のために、今きちんとしつけておかないと」「親のことを認識できていないのでは」など、大きな戸惑いや不安があります。しかし、親子通園をする中で、気持ちがすれ違って腹が立ったり落ち込んだり、また子どもの気持ちを発見して喜んだりといった紆余曲折を経て、次第に分かりにくい行動の意味や子どもの気持ちを手応えとして掴めるようになります。たとえ子どもが能力面や対人関係で弱さを残していても、その歩みがゆっくりであっても、「一緒に通ってきて良かった」、「この子もちゃんと分かっているんですね」、「可愛くなってきました」など、本人なりの成長を喜べるようになってこられます。 そして、上のきょうだいについても、「大きいからしっかりさせないと思っていたが、同じように甘えたい気持ちがあるんですね」「ちゃんと話を聞いてあげたら、元気になりました」「障がいを持つ子にも優しくなりました」という言葉が聞かれるようになったりします。 園では、卒園した後もニーズがあれば相談を継続できる体制を作り、親同士が先輩・後輩のつながりがもてるよう支援しています。子育てに困難や悩みはつきものであり、将来への不安や焦りをすっかりぬぐい去ることはできないにしても、こうした支援があることで、親は「困ったら相談すれば何とかなる」という安心感と「地域で暮らしていきたい」という願いを持ちながら、日々の生活を送っておられるように思えます。 |
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※ | 本稿は、第17回自閉症実践療育セミナー「自閉症臨床~人間性重視の療育:施設現場における療育の創造」発表資料(2000年8月23日)を一部修正したものです。 |
【参考文献】
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