会報「風の輪」 第52号(平成26年7月発行)
障がい福祉の目指す先は 今後の障がい者施策の方向について
<変わる障がい福祉施策>
 今年度の制度変更の特徴をまとめると、以下の3点になる。まず第一に、本人の障がいの状態、程度を表す「障害程度区分」が全く異なるロジックによる「障害支援区分」に変わる。これは、介護保険同様二次判定の結果も含めたソフトを作ることで、審査会での変更を最小限にしようという試みだが、法人内の利用者で試算したところ、平均して区分が0.3くらい下がった。都市部で、審査会による区分変更をしっかりやっていたところほど区分が下がりやすいという結果なのかもしれないが、対応策を検討する必要がある。第二に、ケアホーム、グループホームがグループホームに一元化される。このこと自体は名称が変更されるだけなのだが、同時に支援費単価を夜勤体制と宿直体制に分けて、宿直体制の場合かなり支援費が減少する。知的障がいの人の場合、行動障がいが激しかったり、睡眠障がいがある人を除いて、夜眠れる人が多いため、宿直体制を取っているところが多い。支援費収入が減少する事業所が増えると、深刻な影響が生じるものと思われる。第三に、在宅の人向けに長時間ヘルパーを派遣できる重度訪問介護の制度が、身体障がいの人だけではなく知的障がいの人にも適用される。しかし、時間が増える分単価も安くなるため、どれだけヘルパーを派遣する事業所が出てくるかは疑問である。
 これら3点、どれをとっても難しい方向での変更であるが、果たして日本の障がい福祉施策がどのような方向に進んでいったらいいのか、もう一度整理してみる必要があると思われる。以下、今後の方向性について私見を述べる。
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<一人ひとりが自分らしく>
 1998年に厚生労働省が基礎構造改革を打ち出してから、支援者と利用者とが対等な立場で、契約に基づき支援が行なわれるようになり、高齢者の分野では介護保険が、障がい者の分野では支援費制度がスタートした。障がい分野は、紆余曲折を経ながら自立支援法、総合支援法へと移行していった10年であったが、もともと基礎構造改革を断行した理由は、行政が税金で直接福祉施策を行なっていた「福祉国家」の短所として、コストの割には融通が利かない、いわゆるお役所仕事の結果、財政負担が増大したこと、規制緩和を行なって、民間活力を利用することで財政負担を減らしつつ、サービスの需要にも応えられるようにという意図があった。これは「新自由主義」の考え方に基づくものであったが、結果として、新規参入による福祉サービスの質の低下、自由競争で賃金が低下したことによる、福祉分野からのマンパワーの流出、福祉分野に就労する人が少なくなったことにより、大学等においても福祉関係の学科の閉鎖等の悪影響を及ぼした。ここ数年処遇改善交付金の交付等、国もやっと対策を講じるようになったが、根本的な解決策は見いだせていない。
 急速に少子高齢化が進む昨今、行政改革、民間への事業移行は必要であるが、支援の質を確保しつつ、障がい者一人ひとりが安心して生き生きと暮らしていける地域になっていくこともまた、非常に大切な課題である。このことを可能にするためには以下の視点が重要と考えられる。
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<本人主体の支援のために>
 すなわち、国が障がい者に対して弱者保護の立場でのみかかわるのではなく、サービス事業者や家族が自らの意向を最優先にかかわるのでもなく、本人の立場に立って、本人主体の視点で支援が行なわれること、また、相談支援事業所と行政が公私共同で地域自立支援協議会を中心にして、新規参入の事業所も含め、地域で本人中心の支援を保証できる社会資源(専門家)のネットワークを形成、育成していくことが必要と考えられる。ただし、この本人主体の視点は障がい者だからそうだということではなく、地域に住む住民の一人として、障がい者もそうでない者も一人ひとりの主体性が尊重された結果として出てくるものであり、障がい者本人と地域の住民が互いの価値を認め合いつつ生活できる地域社会を作っていけるよう、関係者が地域のネットワークを形成していくこと、行政は自立支援協議会と共に、地域活動協議会や連合町会等、地域福祉の主体がこれらのネットワークをしっかり築いていけるよう、側面から支援していくことが必要である。
 福祉国家は国、行政が主体となって処遇を進めていったし、新自由主義では、事業者が主体となって進めていた。福祉国家でも新自由主義でもない第三の道とは、国や行政が決めるのでも事業者や家族が決めるのでもなく、行政、事業者、当事者、地域の人たちがネットワーク(専門家のネットワークと地域のネットワーク)を作り、本人主体という視点で福祉サービスや地域でのシステムの在り方を検討し、障がい者、地域住民双方が安心し、主体的に生活していける地域社会を作っていくことではなかろうか。
西淀川区障がい者相談支援センター風の輪 所長 加藤啓一郎

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社会福祉法人 水仙福祉会