会報「風の輪」 第61号(平成28年8月発行)

風の子保育園での障がい児保育の思い出
水仙福祉会の考え方を知る


  風の子保育園父母の会の役員をしていた頃、私がたまたま、保育園にいた時のことです。雨樋が壊れて雨水が垂れるのを、障がいのあるAくんが空き缶で受け止めようとしていました。2月の寒い時で私は「冷たいから」とAくんを制止しかけました。すると松村寛園長から「小河さん、ちょっと待ってください」と止められました。
 「この子は『冷たい』ということもありますが、『遊びたい』という気持ちの方が強いのだから、無理にやめさせない方がよいと思います」。風邪をひくのではと心配する私に、園長先生は「遊びながら『冷たいな』と感じて自分でやめるから、見ていてください」とおっしゃいました。
 しばらくして、手が冷たくなってきたのか、満足したのか。様子を見計らって近づいた保育士に、Aくんは空き缶を手渡しました。「障がい児だから可哀相だからということではなく、力で止めるのでもなく、本人の気持ちを大切にする」ということがこの時に理解できました。
 こんなこともありました。風の子児童館の子どもたちと豊里大橋までサイクリングすることになり、障がいのあるBくんも参加しました。他の子どもは橋の勾配が急なのを見ただけで嫌になり、近所の神社で休憩。ところがBくんは橋を走りたいのか、自転車を降りません。いったんは、みんなと児童館に戻ったものの、まだ自転車で走り回る。そこで、職員は再度豊里大橋までサイクリングし、戻ってきたら、今度は満足気に自転車を降りたということがありました。これも、先ほどのAくんと同じで、本人が得心してやめています。
 Bくんとは苦い思い出もあります。家族ぐるみでスキーに行くなどもしていて、私はBくんから信頼されていると思っていました。ある日、Bくんの自転車のタイヤを修理した時、黙って立ち去ろうとするBくんに、「ちょっと待ちなさい、お礼ぐらい言って帰りなさい」と注意したところ、Bくんは心を閉ざし私に会っても喋ってくれなくなりました。「やっぱり強制はアカンなあ」と反省しました。
 この「強制しない」というのは、法人の理念として続いています。今、私は水仙の家のデイサービスを利用していますが、ここでも強制されることはありません。理念が引き継がれています。高齢者は生きることに不安を持っていますので、なおさら強制はいけません。法人の施設利用者が増えることは、多くの人にこの理念を広げることにつながると思っています。
 そういえば、水仙の家ができた頃、初代施設長の禅定正世先生から地域向けのコーラス団に入会を誘われました。「男性がいないから」と。断れない私を分かっていてのお誘い、あれだけは強制だったかなと思っています。

 昭和39年頃から、風の子保育園父母の会会長・学童クラブ父母の会会長・どんぐりクラブ会長・水仙福祉会理事などを務められた小河次夫さんにお話を伺い、まとめました。

[写真コメント] 風の子保育園盆踊り(昭和30年代)
元風の子保育園父母の会会長 小河 次夫

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社会福祉法人 水仙福祉会