「想いのキャッチボール」

 水仙福祉会の職員になって9ヶ月になるが、日中活動において自分のなかで度々ぶつかる壁がある。それは利用者さんとのコミュニケーションだ。風の子そだち園の利用者さんは、言葉をもっている方や言葉での会話が難しい方がいる。発語の少ない利用者さんと過ごすなか、私はまず、どのように距離を縮めたらいいのか分からず戸惑うことが多かった。そして普段の人間関係のなかでも、私はこれまでどう人と会話をしてきたのか?気持ちを共有してきたのか?自身のことを改めて考え直す日々が続いていた。

 ある時、そのヒントとなる出来事が起こる。私が体調不良でぐったりしていた時、心配してそばに来てくれた利用者さんがいた。私はそっと彼の肩に身を寄せると、体にポンと手を置いて、しばらくじっとそばにいてくれた。やさしい時間が流れていた。置かれた手から、表情から、『よしよし、大丈夫』『元気出してね』『心配だよ』彼の想いが伝わってくる。そこに言葉での会話は一切無い。でも、確かに届いた気持ちがあった。

 「想い」を心で感じ取る…そこからコミュニケーションは始まるのかもしれない。自分の中で何かが動いた気がした。

風の子そだち園・支援員(平成20年入職)

第41号(平成21年5月発行)より

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