会報誌「風の輪」に掲載している当法人の各施設・事業所で働く職員による随筆です。


「雨のち花」

 最近の日々を振り返りながら書くことを考えていると、ある利用者さんとのできごとがパッと頭に浮かんだ。その方は音楽が大好きな方で、月に3回ほど地域の方たちと一緒に行なうコーラスの活動をとても楽しみにされていた。

 ところが、ある難しい曲が出てきた頃から、本人も「コーラスのことで悩んでいる」と話すようになり、日中でもモヤモヤしている様子がよく見られた。本人の気持ちに寄り添いながら話をするも、なかなかすっきりせず、私も同じように悩んで考えた。実際に楽譜をもらって難しい部分を分析してみたり、一緒に練習したり、毎週施設に来てくれている音楽療法士の職員に相談したり…。

 そんな私の姿をしっかり見てくださっていたのだろうか。本人の様子が変わってきているのに気づいた。自分自身の壁に立ち向かおう、少しずつ一歩を踏み出そうとがんばっているのが伝わってくる。

 「今日もうまく歌われへんかった」と話す時の表情が少しずつ変わってきて、やがて休憩時のちょっとした練習にも「その曲歌ってるやつや」と前向きに参加してくださることも増えてきた。しばらくして、彼女の口から「コーラス楽しい」と笑顔と共に出たことばが、私のなかで印象深く、今も仕事へのやりがいにつながっている。

ワークセンター豊新・支援員(平成27年入職)
第70号(平成30年11月発行)より

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