● | 視点(10)
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子どもは一人ひとりが、かけがえのない存在です。その子らしく、のびのびと育ってほしい・・・これは、私たち大人の願いです。一方、子ども自身はどんな思いを持っているでしょう。まだ言葉で自分の思いを表現できなくても、安心感や希望を持てる生活、自分を大事にしてくれる大人を求めているに違いありません。 大人の願いと子どもの思い、この両者がすれ違わないためには、何が必要でしょうか。 子どもに障害や発達の遅れがあると、私たち大人の目は、どうしても「できない部分」「他と違う部分」に向きます。そうすると、本来子どもの幸せを願う気持ちが、「できなくて苦しむのは子どもだから」と考え、「このままではいけない」→「今、何とかしてあげなければ」→「練習させる」「理解させる」「がんばらせる」といった一連の「○○させる」働きかけに傾く恐れがあります。実際に専門職もそのように考えて、自立に向けて厳しい指導訓練がなされた時代がありました(今もそれが必要と考える人がいます)。 そのような考え方は、本当に子どものためになっているのか、きっちり検証されなければなりませんが、一番大切にしなければならないのは、本人の思いです。「できるようになってうれしい」「もっとしてみたい」と意欲がわき、自分に自信が持てるなら、もちろんOKです。しかし、表面上は大人の期待通りできたとしても、本人が「喜ばない」「人からの働きかけを嫌がるようになる」こともあります。多くの場合、結果の良し悪しは、大きくなってからでないとはっきり分かりません。しかし、子どもは常に自分の思いを精一杯発信しています。その表情や視線、周りの人との関係の取り方を注意深く見れば、小さい時にも判断できます。笑顔、意思表示、意欲、自発性、人への信頼がその鍵です。 たとえ評価されるほどの能力があっても、本人は嬉しいと思わない、自信がない・・・そのようなことは、私たち大人にもあります。できるか・できないか、それ自体より、何かができたりできなかったりする、その自分を本人がどう感じているかが要です。能力に差があっても、人としての価値はけっして変わりません。どんな自分であっても自分のことを大切に思えるには、身近な大人が子どもの意思を尊重し、ありのままの姿を受け止める努力が必要です。人への信頼、自尊感情が育てば、必ず意欲が育ちます。 今、障害福祉では、意思決定支援や社会参加への支援がしきりに言われています。成人になってからでなく、幼児期から自尊感情を育てることを大切にして、大きくなったときに、子どもも大人も共に「良かった」と思える支援を一緒に考えていきましょう。 |