● | 視点(11)
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私たち大人が子どものことを「この子は○○だ」と判断・評価しているように、子どもの方も「この人は□□だ」と大人の態度を見ています。大人と子どもは、いつでも「見る-見られる」関係にあります。 たとえば、私たちが目の前の子どもに対して、「一体何を考えているのか」「どうしてこんなことをするのか」「なぜできないのか」と否定的に見ると、子どもの方も同じように「この人は分かってくれそうもないな」と捉えます。そのような人間関係においては、大人の言うことを聞いているように見えても、心の底には反発心や怒りが蓄積し、子どもは次第に「こんな自分はダメだ」と否定的な自己像を持つようになります。そのような状態を見ると、大人は「やっぱり障害があるから」「こんな性格だから」と思い込んでしまいます。 逆に私たちが子どもに対して、「どうしてこんなことをするのだろう」「何かワケがあるに違いない」と行動の背景にある心を理解しようと肯定的に見ると、子どもはそうした大人の姿勢や態度から、その変化を敏感に感じ取ります。子どもはいつも理解してくれる人を求めているので、必ず、そういう大人には「一緒にいたい」という思いを抱き、要求や意思を伝えるようになります。大人と子どもは互いに気持ちを通わせる関係に向けて動きはじめます。そのなかで、子どもは「自分は大切にされている」「今の自分で良い」という肯定的な自己像を持つようになります。 このように、子どもは絶えず周りの大人の見方やかかわりから影響を受けています。言葉や行動ではっきり表現していなくても、子どもは一個の主体としてちゃんと意思や感情を持っています。大人を困らせようと思っている子どもはひとりもいません。 これまでこのコラムで何度か取り上げてきましたが、障害や発達の遅れがあると、どうしても目に見える障害や他の人との違いに気を取られるため、子どもの精一杯の表現を受け止められず、社会への適応や能力促進を優先する見方や指導・訓練になりがちです。しかし、それは往々にして情緒面や意思決定への配慮を欠くため、大切な人間関係を悪循環させ、本人発信のコミュニケーションを阻害する可能性があります。 すこやかな成長は、安心できる人間関係があってこそ支えられるものです。今一度、「見る-見られる」関係から、大人と子どものコミュニケーションを見直しましょう。 |