視点

視点(15)
抱っこが難しいとき

 抱っこをしようとすると、身体をのけぞらせる、しがみつく、ズシッと重く感じられるお子さんがいます。乳児期から抱きにくかった子もいれば、歩き出して以降、あるいはある時点から難しくなった子もいます。今回は、抱っこの意味と対応について考えます。

 抱っこやスキンシップは、健やかな成長・発達に大きな役割を持っています。抱っこされることで、子どもは、①好きな大人に甘えて、安心感を得ることができます。②不快・不安・不満を感じたときや困ったときに気持ちを立て直すには、抱っこが一番です。どんな障がいがあっても、どんな困難な環境に置かれても、子どもは、お母さんや身近な大人を「心の基地」として捉えられると、安心感と自信を持ち、自分の世界を広げていきます。

 それでは、ゆったりした抱っこができるには、どんな配慮が必要でしょうか。
1. まず、日常生活全体の中で、お子さんが警戒心や不快を感じている場面がないかをチェックしてみましょう。歯磨き、洗髪、しつけ、移動時などに、きつく叱る、強引にさせる、引き離すなどがあれば、お子さんが安心し納得するかかわりを工夫しましょう。
2. 次に、抱っこやスキンシップの仕方です。お子さんが拘束感を感じない、ゆったりした心地良い抱き方の工夫や、優しいタッチングやスキンシップ遊びは、身体に触れられる抵抗感を減らし、人への信頼と安心感を育みます。
3. 抱っこに対する私たちの認識も大切です。例えば、ちゃんと歩けるお子さんに抱っこを求められると、「歩かなくなるのでは/離れなくならないか」という不安を持つ方もおられますが、心配無用です。安心して甘えることができれば、むしろそれが土台となり意欲や自立心が育ちます。また、大人は「行動が拘束される」「身体が疲れる」など抱っこに応じにくい状況におかれると、つい子どもに「わがまま」「横着」などのレッテルを貼ってしまいますが、そもそも「大人を困らせる意図」を持った子はいません。
 何と言っても、「抱っこ」から得られる安心感は、子どもにとって元気の素です。できるときは、気持ちよく応えてあげましょう。できないときは、思いは受け止めつつ、「お母さんは疲れたから、ちょっと休憩させてね」「荷物が一杯だから待ってね」「歩いてくれたら助かるわ」など、こちらの状況や思いも伝えましょう。折り合いをつけるには根気が必要ですが、気持ちが通じあう人間関係を育むうえで欠かせない大切な経験です。時間はかかっても、「大事にされている」実感が得られると、必ず緊張はほぐれて、身体をぴったり添わせるなど抱っこのされ方が上手になってきます(勿論、大人の抱っこの仕方もです!)。

 私たちは、その過程を一緒に歩み、支援していきたいと思っています。

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