● | 視点(17)
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昨年の4 月から『視点』は早15 回目を迎えました。今回は『視点』を通してお伝えしたいことについて書きます。 ①子どもの心に焦点を当てる 発達で気がかりなことがあると、私たちは、つい「できないこと」に目が行き、現状を少しでも良い方向に導きたいとの願いから指導・訓練が必要と考え、子どもの行動を外からコントロールしようとしてしまいます。 しかし、子どもには意思があります。「あなたのために」とこちらが求めても、本人にとっては苦痛で不本意な場合が多々あります。また、本人が精一杯の主張をしていても、表現が上手でないために、正当に受け止められず、かえって叱られたりする場合も稀ではありません。まだ意思や気持ちをうまく表現できない子にとっては、周りの人に自分のことをちゃんと理解してもらうのは並大抵のことではありません。ですから、その子がなぜそのような行動を取るのか、何を考えているのか、困っているか、私たちの働きかけをどう受け止めているかを知る『視点』がとても大切になるのです。 ②成長の糧となる喜びを共有する 子どもは大人からの働きかけだけで育つ受身の存在ではなく、自らの意思で学ぼうとする主体的な存在です。身近な大人に、「ああ、これが言いたかったのか!」「こうしていたのは訳があったんだ!」と行動の背景に隠れていた(自分から表現できなかった)気持ちに気づき了解してもらうと、そこから得られる安心感・喜びを糧にして、人への信頼感がはぐくまれ、自尊感情(自分を大切に思う気持ち)が育ちます。本人を理解しようとする『視点』の共有は、確実に子どものすこやかな成長に繋がります。 ③新たな発見を可能にする 子どもにとって周りの人に「理解してもらえた」喜びを体験する機会は、家庭や園、地域などの日常生活の中にいっぱいあります。大人から見て「厄介」「心配」と見える行動も、子どもの立場に立つと、その子なりの精一杯の訴えと捉えられる場合がよくあります。元来子どもが大切な人を困らせようと意図するはずはなく、むしろ理解してくれる人を必死で探しています。大人が「ああ、そうだったのか!」と合点が行くことが少しずつ増えれば、必ず子どもの側も「この人は分かってくれる!」という実感を持つようになります。それは両者が互いの心を発見・確認する機会が増えることを意味し、気持ちの通じ合う関係が確実に築かれていく方向を示唆しています。 以上のような趣旨のもと、今後も『視点』を通して、皆さんと一緒に生活の中で発見したエピソードを交えながら、子どもの理解と支援について考えていきたいと思います。 |