● | 視点(21)
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言葉が遅い、こだわりが強い、学習が進みにくい、集団になじみにくいなど、お子さんの発達に気がかりなことがあれば、保護者はまず改善する手立て、方法がないかを模索されるでしょう。「○○法が良い」「○○療法で言葉がしゃべれるようになった」と聞くと、誰しも気持ちを動かされます。 そんな時、私たちは一歩立ち止まって、日々のお子さんの様子や大人が感じている困難の内容をもう一度吟味してみる必要があると思います。日常生活の中には子どもの発達を育むヒントが一杯ある一方、家事はもちろんのこと、家族への配慮、近隣との関係など、しなければならないことがたくさんあるため、たとえ大切なことであってもそのことを見過ごしたり、大したことでないと過小評価してしまいがちです。 それに対して「○○法」「○○療法」は、「△△ができた」と成果(と思えるもの)がはっきり目に見えるので、大人の側も「何かをした」という実感が得られやすいと言えます。しかし、日常生活を十分に顧みないまま非日常的な方法を導入しようとすると、そこに無理が生じる場合が多々あるので注意が必要です。一見成果と見えるものが長い目で見たとき本当に子どもの力になるかという点や、以下の点を確認してみましょう。 ・それを実施することで、大切な母親と本人の人間関係に葛藤が生じないか。例えば、嫌がっていても『心を鬼にしてでもさせなくては』と意地になってしまう。子どもが母親に反発し、言うことを聞かなくなる。母子共に楽しめずイライラが募るなど。 ・きょうだい・父親など家族への日々のかかわりや配慮ができなくならないか。父母関係がぎくしゃくする、きょうだいが母親にいろいろな訴えができにくい状況になるなど。 ・母親自身が「よかった」という喜びや「こうしてあげたい」というやさしい気持ちが持てなくならないか。「今のままではいけない」「何とかしなければならない」と焦り、子どもへの腹立ち・いらだちが増える。食欲不振、頭痛、腰痛、疲労、不眠、うつ的になるなど、心身に変調をきたすなど。 上のような場合は、お子さんのことを思うがあまり悪循環していると考えられるので、是非『相談』をお勧めします。お父さんをはじめ、ご家族や友人、あるいは園や相談機関の職員等、話しやすい人に話を聞いてもらうと、「日常生活を見直せば解決できること」「慌てずに時間をかけて待った方がよいこと」「家族や身近な人に協力を求めれば改善・解決が可能なこと」など、日々感じている困難について整理ができて、そこから良い解決法・工夫が見つかるかもしれません。 お母さん方のお子さんの成長を願う気持ちが日常生活の中でお子さんの姿として実現されていくよう、日々の関わりを一緒に経験する事を通して私たちは応援したいと思っています。 |