● | 視点(23)
|
お母さん方のグループ相談や個別相談でよく話題になるのが、『(大人が)困る行動』です。今回は家庭でふだん生じているこの問題を取り上げます。例えば、 ・今まで一人で遊んでいたのに、近頃母親が食事の支度をしていると、台所に入ってくる。戸や引き出しを開ける、スプーンや箸を片っ端から出す。ガスコンロのスイッチ、包丁、皮むき器など危ない物を触る。フライパンや鍋、食器で遊びたがるetc. ・化粧ビン、口紅、ヘアブラシなど、母親の使っている物を触る。ひっくり返す。 こんなときは、お母さんが「怪我するよ!」「危ないでしょ!」と何度言い聞かせても、なかなかやめません。強く叱ると泣き出したり、かんしゃくを起こしたり、隙を見て触ろうとします。その結果、苦肉の策で、柵を作る、鍵・ストッパーをつける、隠すなど、「いかにしてその場から離すか、させないようにするか」が大人の関心事になってしまいます。 これらの『困る行動』をどう捉えどう対処するか・・・それには、「子どもの立場に立った理解」と共に、人間関係や認知など「発達の視点からの理解」が必要です。子どもは自ら「ケガをしたい」とか「大切なお母さんを困らせたい」とはけっして思っていません。むしろ、お母さんへの愛着が育っていく過程で、「お母さんは何してるのかな?」「僕も(私も)してみたいな」「そうか、あれはあんなふうに使うのか!」など、「見たい」「試したい」「知りたい」という好奇心が芽生えてきていることを示唆するものです。そう捉えると、困る行動をやめさせる手立てではなく、親子が互いに納得できる解決の道が開けます。 ・どうしても触られて困る場合には、鍵・ストッパーをかける。その代わり、本人が自由に触ったり試したりできる場所や物を準備する。 ・「一人で触らないでね」とはっきり伝える一方、母親がいるときには手本を見せてあげる、手をとって一緒にする、教えるなど、肯定的なかかわりを心がける。 ・父親や祖父母の援助が得られるときには、お母さん一人でがんばるのでなく、本人のしたいことを一緒に楽しめる機会を設けるようにする、などなど。 このように工夫すれば、お子さんは『(大人を困らせる)困った子』ではなく、『(大人から学ぶ)好奇心のある子』として、見る、聞く、触る、試す等の探索活動や、身近な大人との楽しいやりとりを通して、物の性質や扱い方、物同士の関係を生活の中で学んでいきます。そして、意欲に裏打ちされた経験を重ねる中で、理解力や考える力(認知や思考)がはぐくまれます。知的好奇心や自尊感情をはぐくむ環境とは何か、親子が互いに楽しめる関係とは何かを、改めて考えるきっかけにしていただければ幸いです。 |