● | 視点(33)
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年度末、入園・入学の時期が近づいてきました。幼稚園や保育所、学校など未知の環境に入っていくとき、子どもはもちろん保護者も期待と同時に不安を抱きます。お子さんが新たな一歩を踏み出すとき、どんな配慮が必要か、特に保護者と支援者のあり方を考えてみましょう。 「集団に入って困らないように」との思いから、保護者は、わが子に集団に適応する力をつけてほしいと願い、入園・入学までに「食事、排泄、着替えが自分でできるように」「指示をちゃんと聞けるように」、「きちんと椅子に座れるように」と本人に働きかけます。それがうまくいかないと、「こんなことではやっていけないのでは」と悩みます。受け入れる側から「ある程度は家で身につけてきてほしい」という要請がある場合は、保護者の焦りや負担感はさらに増大します。 いずれにせよ、保護者がわが子にそのような態度で関わるようになると、これまで大切に培ってきた親子関係に深刻な問題が生じてきます。保護者の目が、わが子のできていない部分に焦点化され、「○○させなければ」という厳しい見方になるので、結果として、子どもは信頼している親から「今のあなたではダメです」という否定的なメッセージを受け取ることになります。親子の絆がぐらつき、自尊感情が損なわれます。そして、実際にその兆候が行動に表れます。例えば、ちょっとしたことでぐずる、言うことを聞かない、大人の働きかけを嫌がる、排泄を失敗する、赤ちゃん返りが出てくる等が代表的なものです。中には、「○○園、行かない」と主張をする子もいます。それらは、客観的にみると、大人の焦る気持ちや態度の変化が引き起こしている現象と考えられますが、渦中にある保護者はなかなかそのことに気づきません。「ちゃんとできるでしょ」「そんなんでは○○に行けないよ」など、子どもの不安を増長するような対応をしてしまいます。 子どもが新しい環境になじむには、保護者と支援者の両者に「心がけ」が必要です。まず保護者は子どもの不安な気持ちを支える存在になること、そして、支援者は保護者に対して、「力を合わせて共に支えていきましょう。お子さんのことをいろいろ教えてください。」という謙虚な態度をもつことが望まれます。 保護者の中には「あまり心配なことを伝えると『過保護な親、うるさい親』と思われないだろうか」と思い、心配や気がかりなことを話さない方、あるいは、不安が大きいあまり、「こうして下さい」「こうしないでください」と一方的な要求になってしまう方もおられます。支援者は、それらを「無理な要求」と批判的に捉えるのでなく、大切なお子さんを未知の世界に送り出すごく当たり前の心配や不安と捉え、その声にしっかり耳を傾けるべきだと思います。 また、保護者は、お子さんのことを支援者にしっかり理解してもらえるように、これまでの経過や今の姿を正確に伝えること、そしてご自身の苦労や今後の不安等も率直に伝えることが大切だと思います。理解を前提にした支援ができれば、保護者も支援者も安心なはずです。 ・・・お子さんは大人同士の関係を見ています。一番安心できるのは、保護者と支援者が話がしっかり通じる関係にあること、共に自分のことを大切に思い理解する姿勢を示してくれるときです。それが自信をもって新たな一歩を踏み出すことを可能にするのではないでしょうか。 |