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視点(38)
行動障がいは作られる~本人の意思を大切にしましょう

 幼児、学齢児、青年、成人の各時期に、自傷・攻撃行動・こだわりなど、心配になる行動が生じることがあります。その激しさが増して本人の生活自体が困難になる場合もあります。最初から行動障がいのある人はいません。今回はその背景と支援について考えます。

 まず「人間は心が安定していれば、人を傷つけたり自分を傷つけたりしない」ことを確認しておきましょう。行動障がいは、何らかの理由で心が不安定な状態、たとえば不快・不満・不安などを抱えたままの状態にあることを反映していると考えられます。

 周りの人が本人の困り感に気づかない、あるいは「たいしたことでない」と見て本人にとって不本意な関わり・指導・躾を続けると深刻化します。本人の立場に立って、生活全体の中でどこに不本意な経験があるか、あるいはこれまでの成長過程を振り返って、いつ・どこで・どんな経験をしたかを辿(たど)ることができれば、背景が明らかになります(その作業は容易でありませんが…)。まさに行動障がいは作られるのです。代表的な例を挙げると、
・身辺自立、言語、学習、運動、躾等の訓練で、苦痛を強いられている(強いられた)。
・徹底した偏食矯正の指導により、口を開けない、吐き出すなど精一杯抵抗したが、強引に食べさせられている(食べさせられた)。
・攻撃行動をするので、「目には目を」式に苦痛を与えられている(与えられた)、など。
 以前は、多くの施設や学校で「障がいは克服するもの。自立には我慢・聞き分けが必要」と考え、「がんばらせる」指導・訓練が当然のようにされていました(今なら「人権侵害」「虐待」と言われてもおかしくないものもありました!)。問題は一番大切にされるべき「人としての尊厳」「本人の意思・思い」が軽視・無視されていたことです。「できること」を最大の目標にした「させる」指導は、「本人のために」と言いながら、結果的に本人の主体性を損ない、苦しい状況に追い込んでしまいます。本人の表情・態度・行動から精一杯の意思・気持ちを感じとり、「自尊感情」を育む関わり・支援が求められています。

 ノーマライゼーション、インクルージョンの理念の普及と共に、先に挙げたような強引な指導・訓練は減りましたが、保育・教育・療育・支援の現場には、まだその風潮が残っています。児童期は大人の力がまさるので、子どもの「意思・思い」をないがしろにすることの重大さに気づきにくいので、心しなければなりません。大人にとって何気ないことでも、子どもには大きな負担になっていることもあります。ですから、子どもの心に焦点を当て、大人の働きかけをどう受け止めているかをいつも意識しておくことが大切です。

 行動障がいがあるからと言って、気持ちの通じない「特別の人」ではありません。自らの意思・感情・内面世界を持っています。本人の立場に立ち意思や気持ちを尊重した支援を根気強く続けていけば、時間はかかっても、必ず状況は改善します。

 また、支援者や保護者が、今かかわっている人がどんな気持ちでいるか、納得しているか、何に困っているか、何を願っているかに目を向け、本人の安心できる関わりや環境(特に取り巻く人の環境)に気を配り協力して取り組めば、その予防も可能です。

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