視点

視点(39)
再点検!癇(かん)が強い子どもへの関わり


 落ち着きがない、走り回る、かんしゃくを起こす、キィーと声を上げるなど、「癇(かん)の強い」と言われる子どもがいます。働きかけても拒否や反発といった行動で返ってくるため、保護者も支援者も対応に苦慮します。どんな配慮がいるのでしょうか。

 このような場合、大人の側は、子どもの意思や思いをどう汲み取るか、どのように要求を受け止めるかという難しい課題に直面します。こちらの思いが届きにくいこともあり、確かな反応・手応えを得たい一心から、知らず知らずのうちに働きかけは強くなります。よく見られる例としては、
・『タカイタカイ』→子どもの身体を勢いよく上にポーンと放り上げる。
・『グルグル回し』→子どもの身体を抱えてブンブン勢いよく振り回す。
・『追いかけっこ』→あえて捕まらないように逃げて、子どもに追いかけさせる。
・『くすぐり遊び』→急な早い動きでコチョコチョとくすぐる。
 このようにかかわると、確かに子どもは反応します。キャッキャッとはしゃいだり、ケタケタ笑ったりするので、大人は更に強い調子で関わります。子どもも「もっと!」と要求します。しかし、一見好ましそうに見えるこのやりとりには注意が必要です。

 子どもの表情や行動をよく観察してみましょう。本当に嬉しいときの柔らかな笑顔ではなく、顔は少しひきつって、イーッと身体に力が入っていることが分かります。刺激が本人にとって「心地よいと受け止められる限度」を越えているのです。刺激の強さに支配されている状態と言えるかもしれません。子どもの脳はまだ発達途上にあり、大人のように感情をうまくコントロールできない状態にあると考えられます。それを知らずに「良かれ」と強い調子の関わりを繰り返していると、子どもは「ちょっと待って」「もう十分です」と自分から伝えられないので、緊張・興奮・情緒不安・怒りを蓄積する結果になります。

 大人の側も疲れてきて、気持ちよく応じられなくなります。何度も要求されると、「しつこいなぁ」「いい加減にして」といらだちや怒りさえ感じ、どこかの時点で「もうおしまい!」と強引にやめさせざるを得なくなります。(経験した方は分かると思いますが…)こうしたやりとりは、一時的には楽しいと思えても、最後は未消化な後味の悪い思いが残ります。

 癇の強いお子さんの場合、情緒が安定し、感情のコントロールができるようになるには、周りの人とのワクワクする関わりのなかで、自分の要求や意思を細やかに表現できる経験と、穏やかな働きかけとゆったりとした受け止めを通して気持ちが鎮まる経験が必要です。ゆったりとした抱っこ・おんぶ・スキンシップや、ソフトタッチの声かけや共感はそのような経験に確実に繋がります。本人が「これはいいもんだな」と手応えを感じれば、強い刺激でなくほっとできる関わりを求めることが増え、行動は落ち着き、情緒も安定します。

 ぜひ一度、普段の関わり方を再点検し、上のことを試してみてください。

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