視点

視点(4)
野性的自立と社会的自立

 今回は、自立と依存との関係について考えます。

 成人の人たちの自立の姿は、大きく分けると、「野生的自立」と「社会的自立」の2種類が区別できます。「野生的自立」は「他の人に頼れないから自分でする(自分でするしかない)」自立で、「社会的自立」は「自分の意思で物事に取り組み、必要なときに人に頼れる」ことを前提とした自立です。

 どこからこのような違いが出てくるのでしょうか。

 それは、けっしてその人の持って生まれた素質や障害によるものではありません。周りの支援者や家族、あるいは社会が、どのような人間観・自立観を持ち、小さい頃から、どのような教育や療育、しつけを行ってきたかが大きく影響します。

 前者は、「社会はそんなに甘くない」「依存は自立を妨げる」「わがままは許さない」という古い(一方的な)自立観のもと、「障害は克服するもの」「健常な子の何倍も練習が必要」「苦しくてもがんばりなさい」と、厳しいしつけ・指導訓練によってもたらされた自立です。本人は、確かに身の回りのことは自分でできるようになります。しかし、人からの働きかけを気持ちよく受け止められず、困ったことがあっても自力で解決するしかありません。不安や不快を一人で抱えてしまうので、情緒的に不安定になり、生きるうえで最も大切な安心感や希望を持ちにくくなります。いきいきしたコミュニケーションが阻害され、心の中に孤立感や人への不信感や怒りを溜め込んでしまう場合もあります。

 それに対して、後者は、「社会は人同士が助け合うもの」「一人ひとり違いがあって当たり前」「自立のためには困った時に人を頼ることはとても大切」という人間観・自立観のもと、本人の意思が尊重された丁寧なかかわりを積み重ねながら築かれた自立です。「人への信頼」と「心の支え」があるので、少々の困難があっても積極的に挑戦してみようとする意欲も出てきます。そこには、自分の意思で決める、自分の力でしたい、できてうれしいなど、安心感や希望に裏打ちされた自己信頼や自信があります。

 ・・・子どもたちは生まれて数年、まだ経験も浅く、自分を上手に表現することはできません。早急な自立を求めるのでなく、長い人生を視野に入れ、子どもたちが身近な大人を信頼し、必要なときにはいつでも援助を求められるように、また理解してくれる大人とのやりとりを通して多くのことを学び、自分を豊かにしていける支援をしたいと思います。

 身近な大人への愛着や依存は、自立心を育てる土壌となることを忘れずに…

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