視点

視点(40)
子育ての軸がぶれないように

 子育てが初めての保護者や経験の浅い支援者は、子どもとの継続した関わりから得られる体験的知識が少ないだけに、様々な指導・訓練法や情報に振り回されやすい位置におかれています。今回は「本人主体の子育て」の軸となる基本的考え方を述べたいと思います。

子育てを混乱させる考え 子どもが育つ基本となる考え方
(幼児期に)自分の力でできるようにしておかないと、将来困りますよ。 「○歳までに○○できないと手遅れ」ということはありません。不本意に身につけた能力は生活の中で生かされません。能力を使うのは本人です。本人の意思や気持ちを大切にしながら、時間をかけて生きる力を育てましょう。
人に頼っていると、自立しませんよ。 早急な自立を求めると、むしろ自分でするしかない「野生的自立」(孤立)になります。愛着・依存は人間の基本的欲求です。しっかり受け止めてもらう経験を重ねれば「心の支え」ができて、それを基盤に必ず自立心が育ちます。
子どもの要求に応えていたら勝手気ままな子になりますよ。小さい時に、躾や我慢を教える必要があります。 要求に応じるだけでなく、「理解してもらえて良かった」という経験こそが気持ちの通じ合う人間関係を築きます。意思を尊重し、思いを受け止めてもらえる人とのやり取りを通して、自己主張する力だけでなく、相手の言葉に耳を傾ける姿勢・思いやり・自律心が培われます。
障がいは治りません。
障がいのある子は、繰り返し教えないと自分からは学びませんよ。
障がいは病気ではありません。繰り返しの指導訓練で行動修正を図るのでなく、行動の背景にある心に焦点を当て、共感的理解を心がける関わりを通して、人への信頼、自尊感情が育まれます。本人をよく理解してくれる人がいて、安心感と意欲を持てる環境があれば、学ぶ意欲や能力は育ちます。
人を押す、噛みつくなど、人に迷惑をかける行為は断固許してはいけない。厳しく叱らないと、エスカレートして手に負えなくなりますよ。 「目には目を」方式の対応は決して良い結果を生みません。意思が尊重され、困っているときに支えられる人間関係を築くことが大切です。最初から人を困らせようと思う子はいません。思いがうまく伝わると、子どもはそちらの表現の仕方を学び、攻撃行動はしなくなります。

 大人の要求や枠組みに合わせさせることを最優先すると、子どもに過度の我慢を強いて、結果、本人も保護者も望まない深刻な状況に追い込むことになります。小さい頃から注意深く見ておかなければならないことは、日々の生活が本人にとって安心や喜びを感じるものになっているか、行動の背景に本人の意思や納得があるかという点です。

 私たちは、これまで幼児期・学齢期・成人期と長年にわたり配慮の必要なお子さんとご家族への支援を積み重ねる中で、「本人の意思の尊重」「行動の背景にある心の理解」こそ、子育てや療育の中心に置くべきものと確信するようになりました。

視点ページに戻る

トップページに戻る
運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会