● | 視点(42)
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毎年3月、姫島こども園では、1年間の園生活の節目に、親御さんと職員が協力して記念文集を発行しています。今年度の巻頭に寄せた私の『贈る言葉』を紹介します。 寒さもやわらぎ、明るい陽ざし、暖かな風が春の到来を感じさせてくれる今日この頃です。この3月、通園児40人のうち15人が卒園されます。4月からは、それぞれが保育所・幼稚園・小学校に行かれ、25人のお子さんは引き続き園に通われます。 振り返ってみれば、お子さんが入園された2歳、3歳の頃、親御さんの多くは「うちの子はどこまで分かっているのだろうか」「意思はあるのだろうか」「かんしゃくはおさまるだろうか」「言葉は出てくるだろうか」「友だちと遊べるようになるだろうか」など、大きな不安や心配を抱えておられたと思います。お子さんの在園期間は1年~4年と様々ですが、園の生活や療育・相談等の支援を通して、親御さんが「わが子と一緒にいることが苦にならなくなった」「気持ちが通じあえてうれしい」「やりとりが楽しくなってきた」等の手応えが得られたとすれば、私たち職員にとって何よりの喜びです。 どのお子さんもそれぞれのペースで着実に成長しています。それは表情や目の輝き、遊びや活動の姿、そしてご家族や職員との人間関係等の変化で分かります。例えば、喜怒哀楽がはっきりして、柔らかな表情や笑顔が増えます。身近な大人と一緒にいることを喜ぶようになってきます。甘える、要求を伝える、意思を表現する、自己主張をするなど、人と共に生きていく上でとても大切な『自分(私)』が形成されてきます。このような心の発達を導いたのは、けっして厳しい指導や繰り返しの訓練ではなく、親御さんをはじめ職員など周りの大人が協力しながら、本人の思いの理解に努め、こまやかな気持ちのやりとりを日々積み重ねた結果であることをしっかり心に留めておきたいと思います。 また親御さん自身も、親子通園や家族行事を通して互いに親しみ、経験を交換し、知恵を合わせて育児に関する様々な問題を一緒に考えてこられました。そこから生まれた安心感・連帯感や心のゆとりも成長を支えたのだと思います。 お子さんのすこやかな成長には、これまでと同様に、本人を信頼し意思を尊重してくれる人、困ったときに支えてくれる人、共に喜び、共に悲しみ、経験を共有してくれる人の存在が欠かせません。そのような人間関係を基盤に、子どもは人への信頼、自信や自尊感情(自分を大切に思う気持ち)を育み、生きる力を身につけていきます。困難に直面しても「心の支え」があれば大丈夫です。 私たちは、子どもたち一人ひとりがこれまで培ってきた人への信頼と自信をさらに深め、新たな環境においても、人との楽しい出会いやワクワクした経験ができることを心から願っています。そして、将来に向けて長い視野を持って、親御さんと共に、その成長を支え、見守っていきたいと思います。 |