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視点(43)
はじめての集団生活へ~親子が安心できる配慮

 親子が自分たちのペースで過ごしていた家庭生活から、幼稚園・保育所・児童発達支援センター・学校等の集団生活に入るとき、これまでと異なる環境にどうなじむかは、お子さんにとっても親御さんにとっても重要な課題です。今回は、新たな生活の出発点となるこの時期、支援者・親御さんに求められる配慮・役割について考えます。

◆何より子どもが安心できる環境を!
 はじめての集団はお子さんにとって不安や戸惑いがいっぱいです。多くの場合、「ここで何をするの?」「この人はどんな人?」「(困ったときは)どうするの?」と支援者にはっきりと尋ねることができません。新たな環境にすぐになじめるだけの力も備わっていません。そのため、「玄関・部屋に入らない」「活動に参加しない」「給食を食べない」「うろうろする」「母親にしがみつく」など、不安・戸惑いが即行動に現れます。子どもの立場に立てば行動の意味は了解可能ですが、親御さん・支援者は往々にして、「早く集団生活に慣れさせなくては!」「皆と同じようにさせなければ!」と焦り、早急な母子分離・一方的な誘いかけ等によって不安・戸惑いを助長してしまいます。

 そうした対応によって集団に慣れたように見えても、注意深く見ると、「いきいきさがなくなる」「支援者の働きかけを嫌がる」「友だちとの交流を喜ばない」、また家庭では「母親に無理を言う」「かんしゃくが増える」「登園・登校を渋る」など、気になる行動が出てきます。これらは不本意な状況に置かれた本人が発信するSOSなのですが、それと認識されないどころか、子ども自身が持つ障がいと捉えられてしまうことさえあります。

 園・学校が本当に安心できる場になるには、「物理的環境」と「人の環境」の両面について細やかな配慮が必要です。前者については、園内・校内の様子や活動の流れを理解・納得して参加できるための配慮、落ち着いた環境・楽しい雰囲気作りが欠かせません。後者の「人の環境」はとりわけ重要です。支援者は、その子の持つ不安・戸惑いをほぐし、安心感や意欲に導く『心の支え』=『困り感に気づいて対応できる人』『友だちとの関係を橋渡しできる人』『楽しい経験を与えられる人』になることが求められています。

◆支援者と家庭が協力関係を!
 親御さんと支援者は「視点」を共有し、家庭や園・学校の様子を伝え合うことが大切です。支援者には親御さんの声にしっかり耳を傾け、足元の集団生活で生じる不安や戸惑いを察知して、園内・校内の職員間のチームワークを含め、本人への関わり方を見直すことや、親子に安心感を与える柔軟な対応が求められます。

 以上のような協力関係から生まれる「調和した人の環境」は、必ずや子どもに安心感を与え、対人関係・感情・コミュニケーションなどの前向きな変化を導きます。親御さんは、お子さんが園・学校の場になじみ、自分の意思や要求を率直に伝える姿、その笑顔やいきいきした姿を目の当たりにしてこそ、安心してわが子を支援者に託すことができます。私たち支援者は、療育の基本として、子どもたちとの信頼関係はもちろんですが、親御さんの信頼感に裏打ちされた協力関係をしっかり築きたいと思います。

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