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視点(44)
意思表現が育つ過程と配慮

 人はみな自分の意思や感情を持っています。その人が「良かった」と納得のいく生き方ができるには、その意思が尊重されることが大切です。どんな障がいがあっても発達がゆっくりであっても、基本は同じ!・・・今回は、意思表現が育つ過程を見てみましょう。

意思表現には周りの人との関係のあり方が反映されます。その過程は、大まかにみると、以下のように人を避け自分を防衛する段階から、相手に向けて自信を持って表現する段階まで、いくつかの段階を区別することができます。


特徴的な行動・表現
回避・逃避 その場を避ける・その場から離れる・視線をそらす
身体反応 唾が溜まる・のどが渇く・熱が出る・チック症状・自傷・地団太踏む
防衛反応 口を開けない・声を出さない・その場を動かない・脱力する・顔を背ける・目をつぶる・耳をふさぐ
反発〔訴え〕 手で押しのける・唾を吐きかける・声で訴える・目を見て訴える・押す、叩く、噛みつく、頭突きをするなど、攻撃的な行動
自己主張 ・首を横に振って意思表示する
・「イヤ」「アカン」と言葉で訴える。
 (必死の訴え→落ち着いて伝える)
・納得すると、にっこりする。うなずく。「うん」「ハイ」と返事
 ※納得していないうなずき・返事もある
やりとり 何が嫌かを訴える・言い分を言う・妥協点を見つける・自制する

 意思表現は身近な大人とのやり取りを通して育ちます。支援者や親御さんが、本人の行動からその背景にある意思や思いをいかに読み取り、本人が安心・納得できるような対応ができるかにかかっています。

 私たちは、子どもたちが①~⑤のどの段階にいても、その行動を本人なりの精一杯の意思表現と捉えて、何が嫌なのか、何を訴えているかを理解しようと努めます。たとえ返事が返ってこなくても、誘いかけるときには、分かりやすく説明し、意向を聞き、本人からの意思表示を待つように心がけます。「○○が嫌なの?」「どうする?」「どれにする」と意向を尋ねることで、本人の心の中に(少しずつ、しかし確実に)『相手に向けて意思を表現する態度』が作られていくのです。表明した意思が尊重されれば、「思いが伝わった」との手応えを得られるため、次はより明確な表現になっていきます。

 反面、こちらが「こうさせたい」「させたくない」という強い意図や指示的態度で接すると、本人は強く反発し意固地になるか、逆に自分の意思を抑え込み、従属するようになります。その結果、心の中に怒りが蓄積し、人への根深い不信感を作り出します。

 『私たちの理解や関わり方が本人の将来を左右する』と言っても過言ではありません。

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