視点

視点(5)
心の安定は物や人の見え方を左右します

 お子さんは、お母さんや職員に甘えたり要求や意思を伝えたりするようになるにつれて、周りの物や人への興味が少しずつ広がってきていると思います。それは、大人との関係から得られる安心感と外界への興味とが密接な関係があることを表しています。

 今回は、心の安定と物や人の見え方の関係について考えます。

 人の心はとてもデリケートです。私たち大人でも、心の状態によって周りの物の見え方や感じ方が変わります。特に、経験や知識の少ない子どもの場合は、心が安定しているかいないかによって、その影響は顕著です。

 たとえば、心が安定して穏やかなときは、「自分」という土台が安定しているので、人からの働きかけや刺激を受け入れるゆとりができ、心のエネルギーは外界に向きます。子どもは外界の認識に大切な役割をはたす視覚や聴覚などの感覚や知的能力を精一杯働かせて、周りの物に注目し、それらの関係を理解しようとします。周りの人や活動に対して、「何をしているのかな」「面白そうだな」「自分もしてみたいな」という意欲が自然に芽生えます。その中で好きな人の姿を見分け、声を聞き分け、対人関係を広げていきます。

 一方、心が落ち着かずいらいらしているときは、人の働きかけや外からの刺激は、自分に向かって侵入してくるように感じます。たとえば、普段気にならない人声や物音もわずらわしく感じられて、目をつぶる、耳をふさぐ、その場から離れるなど、防衛的な行動が増えます。子どもは大人のように不快・不安・不満などをうまく処理できないので、自分の気持ちを安定させるために心のエネルギーを使い、周囲の物事に対する関心や意欲はなかなか湧いてきません。人との交わりも避けがちになります。

 以上のように考えると、周りの物や人への関心や理解力を育てるためには、それを受け止める子ども自身の心に焦点を当てることがいかに大切であるかが分かります。日常生活ではいろいろな出来事が起こり、そのたびに子どもの心は揺れ動きます。その心が落ち着きや穏やかさを保つには、子どもの不快・不安・不満・困り感等に対する私たち大人の感受性、対応が大きな鍵を握っています。日常生活を再点検して、どのようにすれば子どもの心が安定するかを具体的に話し合ってみましょう。

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