視点

視点(7)
きょうだいの思いを知る

 今回は、障害のある子のごきょうだいの話です。

 家族支援を一つの柱として取り組んでいる淡路こども園での出来事です。3 歳のK君(発達の遅れ、自閉的傾向)がお母さんと一緒に親子通園をしはじめました。そのうちお父さんも療育に参加、ついで2歳上のお兄ちゃんも園に来るようになりました。

 あるとき、そのお兄ちゃんが「園長に相談がある」と言って、お父さんと一緒に来園しました(お父さんを連れて来た、と言った方が適切かもしれません)。相談室に通すと、「実は・・・」と切り出したお父さんを制して、「今日はぼくが相談に来たんや!」とばかりに「ぼくの話を聞いてください!」と真剣な面持ちで話しはじめました。

 ・・・お父さんもお母さんも不公平や。いつも僕ばかり我慢させられてる。宿題してたら、弟が邪魔しに来るんや。勝手に触ったり、本破ったり、ノートに書いたりする。弟が悪いのに、「ちゃんとなおしておかない方が悪い」って、僕ばかり叱られる。お風呂に入ったら、「10数えるまで待ったって」って言われるから、弟が出るまで出られへん・・・

 あれもこれもと必死の訴えが続きました。よほどエネルギーが必要だったのでしょう。ひとしきり話した後、なんと疲れきってその場で眠り込んでしまいました。

 私は、この「直訴」に心打たれました。自分の思いを聞いてほしい一心だったのだと思います。お父さんも立派でした。ご長男の苦情を、私と一緒にじっくり聞き、「言う通りですわ」と率直に認められました。「私たちが次男のことで園の先生に相談しているのを見と
ったんですよ。家内も私も子どもたちの前で、『園に相談しにいく』ってよく言ってましたからね。それを聞いていて、『自分も!』と思ったんでしょうね」と。

 この出来事の後、家族行事で出会ったとき、お兄ちゃんに「最近、お父さん、お母さんはどう?」と尋ねると、「まあ、まあ」と満更でもなさそうな返事が返ってきました。ご両親によれば、直接派手な兄弟喧嘩をしては仲直りもしながら、兄は元気になりました。以前のような我慢はせず、弟にも直接言いたいことを言い、気持ちもすっきりしたのでしょう。一方では弟を思いやり、自分から譲ったりもするようになりました。K君も自己主張するだけでなく我慢もするようになり、ご家族全体が落ち着きました。

 家族支援の中でも、きょうだい支援はこれからです。

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