新しい入所基準について
2013年4月・第423号「風の子だより」より

 今年の冬は大変寒かったのに、桜の開花が例年より早いと伝えられています。その桜咲く四月を迎え、一年間の活動のすべてが出発します。この新年度には、乳児を中心に四十一人の新入園児を迎えることになりました。

 今年の入園児は、大阪市が新しい入所基準を設定しての最初の子どもたちです。永年続けられてきた入所審査基準が、新しい市長の指示で全面的に改訂されました。それは、すべてが点数制で計算されて、点数の高い人から決められるという方式になりました。

 具体的な細かい客観性のみ追求した基準ですので、入所を希望するお母さんの育児上の困難さや悩みなどの心の問題は論外になります。例えば、きょうだいが別れて別々の保育園に入所している場合、子どもの送迎が大変です。どちらかの園にまとめたいというのはランクとしては低いことになります。また、障がいをもつ子を療育の専門施設に母親が付き添って通っているが、下のきょうだいを連れては大変だから保育園に入所させたいと思っても、これも低い点数で無理ということになります。

 保育園は本来児童福祉施設でありますので、福祉の視点をもって対応することが大切です。従来の入所基準は、大きな枠組みを定めただけのもので、後は役所の中で何人かの人が論議を尽して審査を行うものでした。

 福祉というものは、このアバウトさがとても重要です。人間の悩みや苦しみは、点数で輪切りにして計ることができないものがあります。その人の抱えている事情を斟酌し配慮することが福祉の専門家の役割と言えます。入所を決める基準も、その家庭の状況や、子育てする母と子の置かれた状況を、よく把握していく柔軟さが必要です。

 次に、今年から入園申込みに際しては、第一から第六まで希望を書いて提出するよう役所から要請されています。これまでの第一から第三までというのと違って、区内の遠方の施設まで視野に入れることになります。これも生活を無視した、どこかに入れたらよいという安易な観点です。何もかもが可笑しくなっていく感じで残念です。

園長手記ページに戻る  トップページに戻る
設置・運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会