● | 親子関係を考える 2015年12月・第455号「風の子だより」より |
私たちの法人では、成人の障がいを持った人たちの通所施設が2ヵ所あります。ここでは利用者の主体性を尊重した支援を行っています。それは障がいを持っていることから、周辺に対して屈折した感情でもって生きてきただけに、本人が自尊感情をもって生活していくことが大変必要だからです。 この施設に通うA君は、もう1年程前から周りに激しい暴力が出るようになりました。A君は1人っ子ですが、小さい頃父親から何度も体罰を受けていたようです。両親の夫婦仲は良くなく、A君の前でしばしば夫婦喧嘩をしていました。A君の暴力は、この両親の争いにあることは明らかでした。何度も何度も両親と話し合い、考え方の違う夫婦であっても、子どもの前で口論をするのは止めていくよう申し合わせをしました。でもA君の暴力は、今でも続いています。 A君の問題解決に正面から立ち向かっていた職員のBさんは、複雑な思いです。Bさんの両親も仲が悪く、小さい時から苦い思い出が沢山ありました。両親から離れないと自分が駄目になるという思いを永年持ち続けていたので、大学を出ると直ぐに家を出て暮らすことにしました。しかし、社会に出ても目標を持って歩む自立心に欠けていることに気付かされていました。その要因は、父親からよく叱られてきたことにあることを自覚したのは、A君から学んだことでした。 何回か行われた職場内のA君のケース会議に参加することを通して、Bさんは自分自身の問題に気付いたのでした。そしてBさんは、自分を変える努力を始めることになりました。 この2つのエピソードを通して、仲が悪く子どもの前で口論しケンカする親の言動ほど、子どもの成長に悪い影響を与えるものはありません。もっとも信頼したい父と母だけに、仲良く生活して欲しいと子どもは思っています。子ども自身が自立して、自分で世界を切り開いていくことができるには、小さい時から暖かい家族関係と安定した情緒をもって成長していくことからです。子どもに心配や不安を与えないようにしたいものです。 |