スマートフォン
2016年11月・第466号「風の子だより」より

 昔、テレビが広く普及した時代に、評論家の大宅壮一が「一億総白痴化」になると評していたことを思い出します。それは昨今電車に乗ると、乗客の殆んどが下を向いてスマートフォンをいじっている姿を見るからです。
 かつて通勤電車内の風景は、新聞や雑誌を広げて見る人、読書をする人、居眠りをする人、ぼんやりと窓外の景色を眺めている人の姿が主でした。昨今は、夢中にスマートフォンを楽しむ人たちばかりです。それには両手が必要ですから、争って座席を求めて乗り込みます。

 どの車両にも優先座席があって、体の不自由な人、高齢の人に譲るように表示されていますが、多くが携帯を持つ若者たちで占められています。下を向いて夢中になっているので、前に席を譲る必要の人が乗ってきても気付くことができません。何のための優先座席かと言えます。

 先日、スマートフォンを熱心に扱っている若い女性の前に老夫婦が乗り込んできました。その女性の横には荷物が置かれています。老夫婦は、女性の横に座ろうと声かけをしていました。携帯から目を離した女性は、さも邪魔くさそうに顔をしかめて荷物を膝の上に乗せて、再び携帯の世界に入りました。老夫婦の1人は座れましたが、女性が立ち上がってあげれば2人共座れるのに、携帯の続きがそれを妨害したのでしょう。携帯遊びは、このように人間を変えてしまいます。なんとも腹立たしく、情けない眺めでした。

 日本人は流行に弱く、流行りだしたらバスに乗り遅れたら恥だと思うのでしょう。みんな同じように振舞います。電車の中で、10人座っているうちの9人までが下を向いて携帯に夢中になっている姿は、どう見ても異常です。個性というものがないのかと疑います。この大人社会の流行が、小中学生の子ども社会が真似るようにならないかが大変心配です。

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