叱るということ
2017年3月・第470号「風の子だより」より

 先日、駅で大声をあげて子どもを叱っている母親がいました。近づいて見ますと、子どもは2才児位の男の子でした。母親は何度も「さっき、約束したでしょう。」と声をあげていました。子どもは黙って俯いていました。

 この風景を見て、子どもが大変可哀想になりました。3才未満の乳児期の子どもに、「約束」などというものは殆んど無意味だからです。この時期の子どもの認識は、快とか不快で判断する時代と言われています。子どもにとって、それが「気持よい。」とか、「気持悪い。」とか、または「楽しい、楽しくない。」とかの基準で判断する訳です。いわば理屈抜きで感覚的、感性的認識の時代といえましょう。

 「約束したでしょう。」と言うのは、大人の基準で言っているものです。2〜3才の子どもは、自我を築く時期ですので、大変自己主張が強くなってきます。親から見れば、我がままに見えることでしょう。大人の感覚でいう「ルール違反」だったり、先程の「約束を破ったり」で、つい頭に血がのぼることになります。

 でもこの時代の子どもは、これが普通であり正常の姿です。正常でないのは、腹を立てて叱っている大人の方といえます。幼児期になって情緒不安で多動の子、神経質な子、乱暴な子等々の子どもは、色々な要因があるでしょうが、親、特に母親が厳しいとか、口うるさいとかが大きな原因であるとも言われています。

 やはり小さな子どもに対しては、余り叱らない方が良いと思います。何事もおおらかに受けとめ、子どもの気持に共感するというのが大切です。しかし共感するというのは、大変難しいことです。子どもの喜怒哀楽の感情に対して、「そうだねえ、お母さんもそう思うよ」と気持を理解し、共に解かってあげるという大人の側の言葉と態度です。本当に共感がしっかりできると、素直な子に育つのではないかと思います。   

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