共生社会
(2020年1月・第503号「風の子だより」より)

 今、厚生労働省は、やっきになって「共生社会」という社会関係を築き上げようとしています。人間の社会では、災害があったとき、また家庭で不幸があったり、困る事が起こったりした場合には、「自助」、「互助」、「共助」という対処の姿があります。

 「自助」というのは、自分の力で問題を解決することです。「互助」は、家族や親戚の助けを受けて解決します。しかし、それでも困難なときは、周りに住む人たちが精神的にも、物質的にも協力応援し解決していきます。これを「共助」と称します。戦前は、この3つが基本でしたが、戦後、国民が健康で文化的な生活を営むことを国が保障するという憲法ができて、「公助」という、最後は国や市町村自治体が面倒を見るということになりました。

 国が「共生社会」ということを言い出したのは、この数年前からです。それは、もうこれ以上、国民の社会保障に出す金がないので、国民の中で互いに助け合ってほしいという主旨からです。そのためには、「共に生きる」という市民の意識や考え方を広げていきたいという事です。

 いずれ、こんな時代が来るであろうということは、予想されていたことですが、令和の時代になって国の政策を変えていきたいということでしょう。

 戦争前までは、この「公助」というものは、まったくありませんでしたので、収入がなく貧乏になれば餓死するしかありませんし、病気になり治療が受けられなければ、死ぬしかありませんでした。こんな社会では必然的に「共助」という助け合って生きていく姿が生れてきたといえるのでしょう。例えば、家で「お寿司」を作ったら、大抵は隣近所に配って食べていただくというのが常識でした。お米や醤油を切らしたら、隣の家に借りるというのも自然の行為でした。現代の人々には想像できないことでしょう。しかし、この「共助」というのは国の要望と関係なく、本当は大変必要な行為です。

 何でも役所が責任をもつべきで、他人の不幸には目をつぶるという利己的生き方が広がっている現代の姿も問題のあるところです。

 新しい年を迎え、みんなで考えてみたい問題です。

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