道草(みちくさ)
(2021年11月・第525号「風の子だより」より)

 今年のノーベル物理学賞に、米国籍ですが、日本人の真鍋淑郎さんが選ばれました。大変嬉しいことですが、その真鍋さんが次のように語っていたと言われています。それは「もし道草をしなかったら僕の人生はかなり変わっていたに違いない。」と。

 若い頃に大気の振る舞いをコンピューターに再現するプログラムの開発に取り組んでいましたが、途中違う事柄に興味を持って夢中になったということです。横道にそれて時間を費やす道草が、この度の賞を受けた地球の温暖化研究の発見につながったということです。

 昔から親は子どもに「道草しないで真っすぐに帰ってきなさい」と言っています。それは遅くなったら心配するということだけでなく、物事に集中して欲しいという気持ちが含まれているからでしょう。親も保育士(教師を含む)も、多くの大人たちは「真っ直ぐ前を向いて」とか、「きょろきょろしないで」とか「おしゃべりが多い」とか、「もっと集中して」「早くしなさい」とか言うことが多いのではないでしょうか。

 しかし子どもは大人以上に物事に集中することは難しいようです。周りの動きや音や話し声に敏感に反応します。そして、興味が移っていきます。子どもの遊ぶ行動を見ていると、面白いほどに次々と変化していきます。この変化が子どもの知能や感情の発達を促しているのでしょう。

 このように考えると、子どもにとってたくさんの道草の機会を作ってあげられるのが理想です。それは自然の世界に触れる機会を作ってあげることです。雑草に触れ、石を蹴り、虫の世界を見る、星や月を眺める。そんな自然の変化を感覚的に面白いと理解できることが望まれます。

 私たちの法人施設は、丹波篠山に自然豊かな「丹波の家」という施設を持っています。そこで子どもたちが一杯に自然の中で道草をして遊び、たくさんの事柄を吸収してくれることを願って運営しています。

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設置・運営主体
社会福祉法人 水仙福祉会