● | 共生社会 (2023年7月・第544号「風の子だより」より) |
いま政府が日本の将来図として描いているのに、「共生社会」というのがあります。随分前から、学者の人たちが提唱している考えでもあります。それは人々の幸せな社会を実現していくためには、国や地方の行政の力だけでは無理であり、結局、国民自身が互いに助け合い、支え合う社会を築いていくことが基本になるべきであるという考えであります。 日本も昔は、向こう三軒両隣りという社会の成り行きがありました。一般に庶民は長屋生活が基盤にありましたので、生活必需品や食べ物の貸し借りは当たり前の習慣でしたし、家を留守にする時は、隣りに頼んで家に鍵もかけないで外出するというのが自然のことでした。こうした助け合い、思いやりのある地域社会は、現代の都会ではほとんど無くなっているといえます。むしろ、隣りは何をする人ぞで、近所の人に不幸があったり、犯罪が起こったり、また児童が虐待されていたりしても気づかず放置されているという冷ややかな人間関係の社会になっています。 ただしかし、地方の田舎に行くと、若い人が居なくなって人口が減り、老人だけの社会になり、互いに地域の中で助け合ったり協力し合ったりしている姿がテレビなどで報告されて知ることができます。 本来、人間は孤独に孤立して生きることはできません。人を頼りにしたり、支え合ったり、慰め合ったりすることで、生きる元気が出てくるはずです。保育園に通う保護者は、「共働き」という共通の生活基盤にある人たちです。それだけに、生活上の喜怒哀楽もよく似た関係にあるといえましょう。それだけに保育園を接点として、保護者同志の関係を深め、互いに支援し合う関係が作れたら良いのではないかと思います。 いまから40年程前の保護者の関係では、そういう姿がいくつか存在していました。しかし、コロナを経て社会が変化してきている中で、これは単なる願いごとに過ぎないかもしれません。 |