『僕を受け止めて』保育のなかで感じた子どもの思い |
会報「第41号 共に生きる」より(平成27年3月発行) | |
O君(4歳)は2年前から姫島こども園に通っています。言葉数は増えてきましたが、「あのな…えっとな…」と言いよどむことが多いため、お母さんはついイライラして「何が言いたいん!?」と問い詰めるような言い方になってしまいます。O君には自己主張の強い姉(5歳)と弟(2歳)がいて、お母さんにじょうずに甘えることができません。O君も思いが伝わらないと怒りました。 また園では、新年度で他の子どもも見ないといけない状況から、職員の心にもゆとりがありませんでした。クラスが変わると環境の変化に戸惑い、ケラケラ笑って走り回る、椅子を倒していくなど、激しい行動が続きました。クラスの雰囲気が落ち着かず、O君は新しい担任にも安心して甘えられず不安な日が続き、家では夜泣きや登園を嫌がることが毎日あって、お母さんは心配していました。 6月末からO君は虫に興味を持ち、毎日園庭で虫捕りをするようになりました。ある親子通園日、O君はめずらしく「せんせ〜…虫捕り…」と誘ってきました。せっかくのO君からの誘い、そして今一番好きな虫捕りを通してもっとO君と関係を深めたい、今がO君の思いをしっかり受け止めるチャンスだと考え、一対一で腰を据えてじっくりつき合うことにしました。O君はとてもうれしそうに30分ほど夢中で虫捕りをし、「あのなぁ…えっとなぁ…これ幼虫やで」「先生これ何?捕って〜」「O君知ってんで、教えたろか、えっとなぁ…」など、今までにないほど精一杯自分の言葉で思いを伝えるO君。今までも話したいこと、わかってほしいことがたくさんあったのだと、その時に気づくことができました。捕った虫を自慢げにお母さんに見せにいきました。そんなO君を見てお母さんも「すごいな〜!ありがとう!」ととても喜んでいました。 翌週からO君の様子が変わりました。「先生がいい」と甘えて私を選んで抱っこを求めたり、「○○くん抱っこしたらだめ!」とやきもちを焼いたりするようになり、気になっていた激しい行動が減ってきました。夜泣きがなくなり、順調に登園できるようになり、お母さんはホッとした様子でした。 |
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※写真はイメージです。 |